『ヴイパッサナー瞑想が変えてくれた人生』 Y.T.

 

◎瞑想実践前
  小さい頃から、親、友達、多くの人たちを、責めて、疑って、妬んできました。そうすることが、この世の中で自分を守り、生きていくためには不可欠だと思っていました。
  中学・高校時代は、家出をし、落第し、友達関係を全く築けず、親が心労で倒れた日もありました。大学時代は、特定ドグマに依る学生運動に没入。卒業間近のある日、唯一の友の自殺に遭い、以来自責の念に苦しみ、のたうち回る日々を重ねました。
  何とか教職に就きながらも、失恋を機に強烈な自己否定感に陥り、不快な過去回想とともに、自殺衝動が頻発。
  以後、打開策を求め、各種療法や薬による治療を試みましたが、私にとっては一時的な安心感だけで、根本的な解決には至りませんでした。
  その後、遅くに結婚。程なくして、一緒に暮らす義母との軋轢に苦しみ、仕事では、モンスターペアレンツに遭い、「告訴する」などと連日訴えられました。この頃から、急激な体重増加と、6年前に発症した顎関節症の悪化に見舞われました。
  しかし、その渦中にあっても、私の、責めて、憎んで、妬んで、という攻撃的な傾向は抑えられませんでした。

 

◎瞑想実践後
  「今、生きているということが、他人から優しさを受けてきた証し」
  平成24年春、初めて朝日カルチャーの講座に参加。地橋先生の言葉が心に響きました。
  「生きものが生きていくことには、必ず苦が存在する」「人との関係は自分を映す鏡。自分を悪意で見る人に出会うのは、自分も悪意で人を見ているから。人が自分を善意で見てくれるのは、自分もそう見ているから」「同じ事実に対して、どこを見るか、どう枠組に入れるかで受け取り方が変わっていく」「この瞑想は、心の便所掃除」・・・。
  先生の一言一言が心に突き刺さり、自分を苦しめていた正体は、人に向けていた自身の刃だと気づきました。
  その日以来、絶対に後戻りはしない、為すべきは、すべてこの一回限りと決意し、五戒の遵守、慈悲の瞑想、サティの瞑想を重ねていきました。
  モンスターペアレンツの方に対する時、全身全霊の慈悲の瞑想ののち応対。すると一方的な批難の嵐が、「何だか、気持ちを受け取ってもらっているようで・・・」と変化。結局は転校していきましたが、残された言葉が「いい学枚でした」。この言葉には、私も校長先生も驚きました。
  顎関節症は、時に耳元に火箸を当てられたような激痛が走ったこともあります。 3度も医者を替わり、マウスピースを毎晩装着して寝ていました。
  「歯ぎしりやむやみに強く噛むことがあるのでは?」と指摘されましたが、まさにストレスや怒りの度、しきりに歯ぎしりをしていました。
  それが瞑想を始めてから、噛み締めがなくなったためか、今はほとんど症状が消えています。
  五戒の中でも最も心配だったのが、不飲酒戒です。酒を伴う宴会が社交に及ぼす効果もあろうかと考えていたからです。
  しかし、杞憂でした。忘年会や納め会も含め、 1年間、全く口にすることなく終えられました。加えて、飲食不摂生の是正により、脱メタボの爽快感が得られています。
  「瞑想実践後」の変化として最も記しておきたいことですが、私は、恥ずかしいことに、生まれて一度もまともに募金に応じたことがありませんでした。
  ある初夏の日、「交通遺児育英募金」箱を抱え、汗を流し佇む中高生の姿がありました。思わず立ち止まり、慈悲の言葉で心を満たしながら、ぎこちない動作で初めて募金。丁寧なお辞儀と、「本当にありがとうございます」の温かい声が返ってきました。その瞬間、私の体にとてつもない優しい風が吹き込み、時を置かずして私の目から温かい涙が湧き出てきました。
  瞑想を始めて1年半、必ず早朝に10分、必ず昼食前に慈悲の瞑想、必ず一日一善、そして、朝日カルチャーの講座の他、瞑想会や泊まらない1Day合宿にも参加しています。集う皆様とともに、真剣で静謐な時間を過ごさせていただき、いつも凛と整えられる心身を実感しています。
  これからも「我が身に起きたことは、それでよし」の心構えで、倦まず弛まず歩む次第です。
 すべての衆生が幸せでありますように。